競争は協力の敵

チームを作る理由は、相乗効果を得るためです。相乗効果とは、色々な要素が合わさって、単体で得られる以上の結果を上げることです。つまり、1+1>2になったとき、相乗効果が得られたことになります。相乗効果が得られないのであれば(1+1<=2であれば)、単独で動いた方が結果が大きいか、単独で動いても結果が変わらないため、チームでいる必要はなくなってしまいます。

チームの皆の協力なくして、相乗効果は得られません。しかし、口でいくら「協力しろ」と言っても、誰も協力をしないことがあります。そのような場合は、チーム内で競争が起きているのかもしれません。

競争は、協力をなくしてしまうどころか、お互いに足を引っ張り合い、1+1<2にしてしまう場合がほとんどです。それは、なぜなのでしょうか。

競争があるということは、チーム内で、順位が存在していることになります。

皆、自分の順位を守ろうとするので、自分より順位が下のチーム員が成功しそうになれば、それを阻止しようとします。同じように、自分より順位が上のチーム員が成功しそうになれば、自分が置いて行かれないために、それを阻止しようとします。

他のチーム員も、自分を踏み台にしようとしていることが分かるため、チーム員同士に信頼がなくなります。チームを信頼できないため、有益な情報や、自分のミスも、手元に隠すようになってしまいます。

「でも、個々の実力は、競争させた方が向上するんじゃないか」と思われるかもしれませんが、実は、それも間違いなのです。競争をなくし、チームに信頼ができれば、有益な情報を交換し合い、ミスから学び合うことができるので、個々の実力も伸びやすくなるんです。

Stephen R. Coveyさんの本、『The 7 Habits of Highly Effective People』の中で、著者は、成功に対しての二つの心持ち(メンタリティ)を紹介しています。豊富メンタリティ(英:abundance mentality)と、不足メンタリティ(英:scarcity mentality)です。豊富メンタリティを持った人は、成功は皆で分け合っても有り余るほどに、豊富にあるものだと考え、不足メンタリティを持った人は、成功は限りのある資源で、皆で分け合えると自分の分がなくなってしまう、と考えるそうです。

僕がこの話を読んだとき、昔、アイスホッケーをしていた頃のことを思い出しました。当時、僕にとって一番大切だったことは、チーム内で自分が一番点を取ることでした。チームが負けても、自分が点を取れてさえいたら、ある程度満足していたほどです。時には、チームの得点でさえ、自分の得点でなければ、まるで、自分の得点を奪われたような気さえもしていました。

そして、そのメンタリティに陥った要因には、少なからずとも、環境もあったと思います。「あいつは、チームで一番点を取る」と言われることが、誇らしかったのを覚えています。また、人にパスをすれば得点のチャンスが増えるような場面でも、それが、自分にとっても得点のチャンスならば、迷わずシュートを打っていました。それによって、「あいつは、得点に対して貪欲だ」と、周りの大人が褒めてくれたのを覚えています。監督も、僕が担当していたウィングというポジションは、点を取るのが仕事だと言って、その仕事ぶりを褒めてくれていました。

恐らく、周りの大人は、僕の自信を育ててくれようとしていたのだと思います。もしくは、本当にそれを良いことだと思っていたのかもしれません。しかし、チームに属している以上、僕の仕事はチームの成功に貢献することで、点を取ることではなかったはずです。ウィングとして点を取ることは、ただの役割です。

一人、同じチームで活躍する選手として、そのことに気づかせようとしてくれた人がいました。しかし、その頃の僕は、「点を取る方が偉い」と思ってたため、自分より点を取っていない(自分より順位が下な)、その選手の意見は、はなから相手にしていませんでした。

企業の中でも、これと同じようなことを沢山見てきました。

一般的な例は、自分が大切に思われたいがために、わざと情報を自分だけのものにすることです。その人がいないと、情報がなく、仕事が回らないために、皆、その人に仕事を頼みに行きます。その人は、皆が持っていない情報を持っているので、早く仕事を片付けます。すると、周りの人は、その人は仕事ができる人だと勘違いし始め、次回も、その人の所に仕事を持って行きます。ますます、その人は情報を独り占めにでき、自分は企業にとって大切な人物だと錯覚することができます。

情報を公開するようにその人に頼んでも、何かと言い訳をつけて、それを拒みます。その人は、「人に頼られる」ことでチームの皆に順位をつけているので、自分の順位を脅かすようなことはしたくないのでしょう。

このような文化を変え、チーム内で協力を促すには、まず、チームの皆に順位をつけるのを止め、チーム内の競争をなくす必要があります。競争があっては、協力は生まれません。

もし、あなたが順位をつけている本人なら、これを止めるのは簡単です。しかし、他の人があなたの意思に関係なく順位をつけているのなら、まず、その人と対話して、その人が順位をつけることで何を狙っているのか、十分に理解しましょう。その上で、その目的は、順位をつけないほうが効果的に達成できると説得できれば、あなたのチームも、皆が協力するようになるでしょう。

チームを作る目的は、相乗効果(1+1>2)を得るためです。相乗効果を得るには、チームの皆が協力することが必要です。しかし、チーム内で競争を促すと、チーム内での協力がなくなり、1+1>2になるどころか、1+1<2になってしまうことがほどんどなのです。そのため、相乗効果を得るには、まず、チーム内の競争をなくす必要があります。口でいくら「協力しろ」と言っても、そこに競争がある限り、チームの皆が協力を始めることはないでしょう。

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Shogo Wada

楽しさと実用性の両立が好き。プログラマー。